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『社会はなぜ左と右にわかれるのか』ジョナサン・ハイト [2018/04/19 10:37]
書名の通り政治思想が中心のテーマだが、内容は認知心理学に始まり、協力・社会集団の進化、宗教にも及ぶ。正直に言って前半は退屈だったが、後半はがぜん興味深く読んだ。 社会保守主義者が志向するエミール・デュルケーム流の社会観は、基本単位は個人より家族で、秩序、上下関係、伝統が重視される。それに対して、リベラルが擁護するジョン・スチュアート・ミル流の個人主義的な社会観は、多数者を統一体に結びつけることは困難であると考える。 すべての動物の脳に備わっているスイッチのようなも..
『パンドラの種』スペンサー・ウェルズ [2017/09/04 23:45]
著者は遺伝学と人類の移住の研究者で、他に「アダムの旅」などを書いている。取り上げるテーマは人類史、農耕の開始、病気、気候変動など幅広いが、原理主義を取り上げた最終章は興味深かった。 ネアンデルタール人は、現生人類とよく似た舌骨を持っていたことから、ホモ・サピエンスと分かれる50万年前までには話し言葉が出現したと考えられている。 7万5000年前から7万年の間にトバ火山が過去200万年で最大の噴火を起こした。吹き上げられた火山灰によって世界の気温は5〜15度下がり、..
『人類進化の謎を解き明かす』ロビン・ダンバー [2017/03/02 23:45]
摂食と移動、社交、休息に必要な時間収支モデルを使って、人類の進化を考察する。霊長類では、社交時間と集団規模は正比例する。生息地の豊かさ(降雨量に依存する)と集団の規模によって移動時間が決まり、それが大型霊長類の生物地理学的分布の制限要因となる。 人差し指の長さの薬指に対する比率(2D:4D)は、胎児が子宮内でさらされたテストステロン濃度の影響を受ける。オスどうしがメスを争う多婚種では2D:4D比が小さく、単婚種では1に近い。体の大きさの性差ともあわせて、現生人類につなが..
『宗教を生みだす本能』ニコラス・ウェイド [2016/11/26 23:45]
読み終えるのに時間はかかったが、内容は意外と単純だった。宗教は社会をルールに従わせるためと、戦争のために結束させるために発達したと説明する。 ドゥ・ヴァールは道徳について、共通の価値に基づいて争いを処理する集団全体のシステムから生まれる善悪についての感覚と定義する。道徳はサルや類人猿にも見られる(対立後の和解、共感、社会ルールの学習、互恵の観念)。 人間が言語を獲得すると、他人が何を知り、何をしたいかを推測する心を発達させた。自分の行動を集団に示して評判を高めるこ..
「人類の起源論争」エレイン・モーガン [2015/02/03 23:45]
著者は文学出身ながら、よくぞここまで集めたと思わせる情報をまとめあげて、初期の人類進化の大きなビジョンを提示している。最後のヒヒ抗体、アファール三角地帯、ラミダス猿人の3つを組み合わせて大胆な仮説を提示している部分は、あくまで推論とは言え、圧巻であった。むしろ、構成力を要求される作家ならではとさえ思ってしまう。科学のおもしろさを改めて感じた。 アクア説とは、人類化石が見つかっていない500万年以上前の時代に、私たちの祖先は一時期、半水生生活を送っていたというもの。194..
「火の賜物」リチャード・ランガム [2014/11/18 23:45]
火を使った料理が人類進化に大きな役割を果たしたとする内容。熱を加えることによって消化率が上がることや、ヒトの消化器官が小さく、咀嚼に費やす時間が短いといった事実から、主張は十分に説得力がある。ただ、火の使用をはっきりと示す最古の遺跡が79万年前にとどまることなど、具体的な証拠に乏しく、多くが推論で構築された説であることがもどかしい感も残った。 食物に熱を加えることによって、ブドウ糖の小粒子であるグラニュールはばらばらになってゲル化する。デンプンの消化率は、熱を加えると生..