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『多数決を疑う』坂井豊貴 岩波新書 [2016/09/09 23:45]
これはおもしろかった。選挙などの社会や組織の意思をどのように決定するかがテーマ。少数意見が反映されない問題を論じているものかと予想していたが、ペア敗者・ペア勝者、二項独立性などといった様々な観点があるという奥の深い内容だった。 他のすべての候補に対して優る「ペア勝者」を選択できる方法がベストのように思うが、それを満たすのは数理統計学を用いる方法しかないらしい。著者も指摘している通り、多くの人にとって理解しにくい方法は民主主義にはふさわしくないだろう。また、アメリカ大統領..
『(日本人)』橘玲 [2016/08/17 23:45]
前半は日本人論。武士道や和の精神は日本人に特有なものではなく、日本は最も世俗的な社会であるとの分析には目から鱗が落ちる。後半は民主制などの社会制度やグローバリゼーションがテーマ。 世界価値観調査の中で、日本人が他の国々と大きく異なっている項目は、「進んで国のために戦う」(15%、先進国で最低)、「自分の国の国民であることに誇りを持つ」(57%、香港に次いで2番目に低い)、「権威や権力は尊重されるべき」(3%、最低)の3つ。 私たちの周りには、家族や友人などの政治空..
『ニッポン沈没』斎藤美奈子 [2016/07/28 23:45]
「ちくま」誌に連載された「世の中ラボ」の2010年8月号から2015年6月号までをまとめたもの。当時旬の社会問題について、斎藤が選んだ3冊程度の本をベースに論じている。いくつか読みごたえのある記事もあった。 「『大きな政府』で何が悪い」では、自民も民主も新自由主義経済の推進者、小さな政府論者が主流であることを嘆く。榊原英資「フレンチ・パラドックス」や、神野直彦『「分かち合い」の経済』は、日本がすでに小さな国であること、大きな政府のフランスが小さな政府の国より経済成長率が..
「統計データが語る 日本人の大きな誤解」本川 裕 [2016/01/16 23:45]
著者はウェブサイト社会実情データ図録を開設している方。本書では、様々な統計を人口比や年齢調整などの比較可能な形でデータを提供し、丁寧な分析をしているが、解釈にはまだ議論が残る部分も感じた。 日本の相対的貧困率は14.9%(2005年)で、OECDではアメリカに次いで2番目に高い。長期的にも上昇している。日本は年齢別の賃金格差が大きく、年金収入のみの低所得高齢者が増えていることが原因であるとしている。ただ、年齢別や世帯数別のデータがないため、分析が不十分との印象が残る。上..
「世界共和国へ」柄谷行人 岩波新書 [2015/11/21 23:45]
資本=ネーション=国家の接合体から抜け出し、世界共和国への道筋を探るという、まさに大胆な考察。マルクスやカントの思想が登場するので、門外漢にとっては理解を超えている。しかし、人間と人間の関係を交換様式で分類するところから始めて、国家や商品交換の成立の歴史をたどるのは、人間社会のあり方とその歴史を理解するという意味でおもしろい。 人間と人間の関係としての交換様式は、4つに大別される(p21)。 A.互酬(贈与と返礼) B.再分配(略取と再分配) C.商品交換(貨幣と..
「(株)貧困大国アメリカ」堤 未果 [2014/10/27 23:45]
アメリカで進む企業による支配の実態について、農業・食料、公共サービス、政府・マスコミの分野を報告している。 石油価格高騰と異常気象によって70年代に世界食糧危機が起きた際、世界の穀物貯蔵の95%はアメリカの民間企業6社が保有していた。アメリカ政府は、食料を外交上の武器として農業政策を自由貿易仕様に変えていった。 1950年には、養鶏場の95%は個人農家が経営していた。70年代の終わりに農業政策が変更されて株式会社による経営が急増した。今では、4社がアメリカ国内の養..