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『多数決を疑う』坂井豊貴 岩波新書 [2016/09/09 23:45]
これはおもしろかった。選挙などの社会や組織の意思をどのように決定するかがテーマ。少数意見が反映されない問題を論じているものかと予想していたが、ペア敗者・ペア勝者、二項独立性などといった様々な観点があるという奥の深い内容だった。 他のすべての候補に対して優る「ペア勝者」を選択できる方法がベストのように思うが、それを満たすのは数理統計学を用いる方法しかないらしい。著者も指摘している通り、多くの人にとって理解しにくい方法は民主主義にはふさわしくないだろう。また、アメリカ大統領..
『「読まなくてもいい本」の読書案内』橘玲 [2016/06/17 23:45]
著者が「知のパラダイム転換が起きた」とする4分野(複雑系・進化論・ゲーム理論・脳科学)と功利主義に絞って読書案内をする。各分野についての解説もその歴史を追う形で読みやすくまとめられている。 複雑系については、マンデルブロを軸にその歴史を追っている。マンデルブロがプリンストン高等研究所の博士研究員となった時、ノイマン、オッペンハイマー、アインシュタイン、ゲーデルなどの知性が集まっており、のちに「この時(の経験)を超えることがなかった」と回想している。マンデルブロは「複雑系..
「中国化する日本」與那覇 潤 [2015/05/06 23:45]
中国脅威論のようなタイトルだが、内容は日本を主題にした中世以降の歴史。中国の宋の時代(960〜1279年)に貴族制度を廃止して官僚は科挙によって広く集め、郡県制によって皇帝に権力を集中させ、経済を自由化した社会を著者は独自に「中国化」とし、身分制を敷いてムラとイエで個人を縛ばる代わりに、誰もがそこそこ満足できた日本の江戸時代をその対極に位置づけている。 南宋時代に朱熹によって大成された朱子学の思想が、皇帝の権力基盤や科挙選抜の理念として用いられた。火薬・羅針盤・活版印刷..
「資本主義の終焉と歴史の危機」水野 和夫 [2014/11/10 23:45]
世界経済を歴史的観点から分析した内容で、グローバリゼーションも格差拡大も賃金減少も、すべて資本家が利益を求めるために国家(国民)を見捨てたためであると説明しています。 14〜15世紀のヨーロッパではペストの流行によって人口が減少したため、労働者の実質賃金が上昇し、封建領主層は没落していった。この危機を克服するために、封建領主の中で力を持つものが国王となって絶対王政が確立し、資本と国家が一体化した。ペストの流行が終了して人口が増加し、地中海地域、英蘭仏独、東欧諸国の3つの..
「ハチはなぜ大量死したのか」ローワン・ジェイコブセン [2014/09/26 23:45]
ハチのコロニーが突然失踪して崩壊する原因を、いくつもの可能性を探りながらひとつひとつ追及していく内容は、著者自身が書いている通りミステリーのようでおもしろい。本書では、結論として様々な要因が絡んだ複合汚染としてまとめている。世界のアーモンドの82%がカリフォルニアで生産しており、その受粉のためにアメリカ中のミツバチが駆り出され、過密な仕事場で過酷な労働を強いられているという。トウモロコシや畜産業に見られるようなアメリカ式の効率主義が、こんなところでも同じような問題を引き起こし..
「政府は必ず嘘をつく」堤 未果 [2014/05/20 23:45]
「ジャーナリストここにあり」と思わせる内容。欧米および日本のメディアが流す情報が政府によって操作されていることを明らかにすることが、この本の主軸になっているが、その内容はアラブの春、カダフィ政権転覆、イラク戦争、TPP、福島原発事故に及ぶ。リビアやイラクを武力攻撃するために行われた情報操作に対しては戦慄を覚えるが、その背景には石油取引の決済方法という自国がつくりあげた国際システムをまもるためと、他国の資源に手を伸ばしたい多国籍企業の存在がある。IMFやISD条項といったルール..