2016年09月09日

『多数決を疑う』坂井豊貴 岩波新書

これはおもしろかった。選挙などの社会や組織の意思をどのように決定するかがテーマ。少数意見が反映されない問題を論じているものかと予想していたが、ペア敗者・ペア勝者、二項独立性などといった様々な観点があるという奥の深い内容だった。

他のすべての候補に対して優る「ペア勝者」を選択できる方法がベストのように思うが、それを満たすのは数理統計学を用いる方法しかないらしい。著者も指摘している通り、多くの人にとって理解しにくい方法は民主主義にはふさわしくないだろう。また、アメリカ大統領選挙のような有力2候補の対決に、第3の候補が影響を及ぼさない方法はないというのも残念だ。結論として、著者は等差のスコアリングであるボルダルールを勧めているが、実際にはほとんどの国の選挙では多数決が用いられていることを踏まえ、投票用紙の設計や開票・集計方法、経済性などの具体的な手続きを考慮した実現性まで踏み込んでもらえると、より面白かったと思う。

多数決:他のすべての候補に対して負けるペア敗者が選ばれることがある。
ボルダルール:等差のスコアリングの場合は、ペア敗者が選ばれることはない。ペア勝者が最下位になることもない。スロヴェニアの少数民族代表選挙、キリバス大統領候補の選出で用いられている。ナウルの国会議員選挙のスコアリングは等差ではない(ダウダールルール)。
コンドルセ・ヤング法:最尤法によってペア勝者を選ぶ。
決選投票付き多数決:ペア敗者が選ばれることはない。
繰り返し最下位消去法:ペア敗者が選ばれることはない。オリンピック開催地の選定で用いられている。
チャレンジ型多数決:ペア勝者を選ぶが、多数決の順番があるので中立ではない。

オストロゴルスキーのパラドックス:政策ごとの民意と支持政党の民意は正反対の結果を生み出すことがある。
アローの不可能性定理:2つの候補の結果に、他のいかなる候補が影響を与えない(二項独立性)ことを求めるのは不可能。
64%多数決ルール:単峰制の候補を選択する場合、63.2%以上の賛成を得れば他の候補とのサイクルは発生しない。日本国憲法の改正ルールについては、国会議員の構成が民意を反映していないため、3分の2ルールは十分ではない。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か多数決を疑う――社会的選択理論とは何か
坂井 豊貴 / 岩波書店 (2015-04-22)
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