2016年12月26日

『人工知能は人間を超えるか』松尾豊

時代毎の人工知能の開発の歴史を追った上で、現在の状況を説明しているのがわかりやすい。ディープラーニングと機械学習との違いもよくわかった。

1960年代の第1次ブームでは、推論と探索によって問題を解く研究が進んだ。チェスや将棋などのゲームでは、盤面を評価するスコアをつくり、そのスコアがよくなる次の差し手を探索した。こちらは点数を最大に、相手はこちらの点数を最小にする手を指すミニマックス法を用いる。局面が最終段階に入ったら、終局するまでランダムに手を指し続けて、その勝率で盤面を評価するモンテカルロ法を用いる。トイ・プロブレムは解けても、複雑な現実の問題は解けないことが明らかになり、1970年代には冬の時代を迎えた。

1980年代の第2次ブームでは、大量の知識を入力することによって現実の問題を解く開発が行われた。知識の概念はノードをリンクで結ぶことによるネットワークで表現したが、それをコンピューターで見つけるライトウェイト・オントロジーによってデータマイニングが進んだ(セマンティックウェブやLinked Open Dataとして研究が展開されている)。IBMが開発したワトソンも、ウィキペディを基にライトウェイト・オントロジーを生成して解答に使っている。

1998年頃から、ウェブページのテキストを扱う自然言語処理と機械学習の研究が発展した。学習とは分ける作業で、判断をイエス・ノーで答えるもの。教師あり学習では、正しい出力を与えて、その分け方を学習させる。分ける方法のひとつであるニューラルネットワークでは、シナプスの結合強度にあたる重みづけを、全体の誤差が小さくなる方向に調整する誤差逆伝播によって精度を上げていく。

機械学習の入力に用いる変数である特徴量に何を選ぶかで予測精度が大きく変化するため、研究機関はその設計にしのぎを削ってきたが、ディープラーニングによってコンピューターが特徴量を作り出すことができるようになった。手書きの文字画像のような入力と同じものを出力にも置き、ニューラルネットワークを用いてできるだけ近くなる重み付けと隠れ層を生成する(自己符号化器。主成分分析と同じ)。生成された隠れ層をさらに入力と出力に置いて次の隠れ層を生成することを繰り返すことにより、高次の特徴量が生成される。

著者は、これまでに研究されてきた人工知能のトピックが、今後ディープラーニングの技術を用いて洗い直されると予測する。時間を扱うことができるようになれば、動画や音声を処理することができる。物を動かすなどのコンピューター自らの動作とその結果を学習することができれば、動作の概念や行動した結果の抽象化が進む。日常の概念を獲得できれば、それに言葉を結びつけることができる。言葉を理解できるようになれば、ウェブや本を通して人間の知識を吸収することになるという。

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの
松尾 豊 / KADOKAWA/中経出版 (2015-03-11)
タグ:人工知能
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。