2015年06月29日

「肉食が地球を滅ぼす」中村三郎

著者は環境問題を中心に取り組むフリージャーナリスト。食肉に関する様々な問題が整理されており、文章もわかりやすい。

牛の場合、食肉になるのは60%。残りの40%はくず肉としてミンチにされ、脂肪分が取り除かれて肉骨粉となり、家畜の餌として与えられる。1980年代に加熱殺菌処理が簡略化されたが、プリオンは安定した物質なので高温処理でも変性しない場合がある。プリオンのアミノ酸配列が異なるため、ヒツジのスクレイピー病は人間には感染しないが、ウシと人間のプリオンのアミノ酸配列は似ている。人間がBSEに感染すると、変異型ヤコブ病を発症する。イギリス政府は1988年に肉骨粉を牛に使用することを禁止にしたが、輸出は1996年まで禁止しなかった。日本はイギリスのほか、EU諸国からも2001年まで輸入を続いた。

o157が人間に感染するのは、家畜の中では牛だけ。感染者の数はアメリカが圧倒的に多く、ハンバーガーの増加に伴って1978年から82年の5年間に急増した。日本でも年々増加している。

牛はフィードロットで濃厚飼料を与えて育てられる。飼料には不足しているビタミン剤が添加され、感染を防ぐための抗生物質や、タンパク質の合成を促して肉質を柔らかくするためのホルモン剤も与えられる。アメリカでは、抗生物質耐性菌による感染が30%以上を占めるまでになっている。食肉からホルモン剤が検出された事件もあった。採卵鶏は1年半から2年で卵を産めなくなると、ソーセージやスープの材料にされる。豚への薬品の使用量は牛や鶏と比べて突出して多い。

世界の穀物の半分近く、アメリカでは穀物の80%が飼料として消費されている。食肉1kgを生産するのに必要な穀物は、ブロイラーで2kg、豚で4kg、牛で8kg。牛が摂取するタンパク質のうち、肉となるのは6%だけで、残りは糞尿として排出される。排泄物は浄化槽で処理されるが、流される上澄み液による河川や地下水の汚染は化学物質による汚染よりひどい。アメリカでは1960年代から農業機械が普及して単作化が進んだ結果、土壌が劣化が進み、農地は3分の2に減少した。アメリカの穀倉地帯を支えているオガララ帯水層は、2020年に枯れることが予想される。遺伝子組み換えによって作られた除草剤耐性大豆によって、耐性を持った雑草が広がった結果、除草剤の使用量が増える結果を招いた。

世界の放牧地面積は耕地面積の2倍にのぼる。アメリカ西部地区では、放牧地から野生動物を排除した。ピューマやコヨーテがいなくなると、その獲物だったウサギ、リス、ネズミが大繁殖した。これらの齧歯動物を毒入りの餌で駆除すると、イナゴやバッタなどの昆虫が大発生して作物に被害を与えた。大気中に放出されるメタンの15%が世界で飼育されている牛が出すゲップによるもので、地球温暖化の一因にもなっている。

アメリカから輸出される農産物には、品質を維持するために殺虫剤や防かび剤などの農薬が散布される。1997年からは放射線照射による肉類の殺菌が認められ、核廃棄物のセシウムが用いられている。人間は5グレイの照射を受けると致死率は50%以上になるが、食肉には5000グレイが照射される。

アメリカでは、病気による死亡者の70%が動物性脂肪の過剰摂取が要因。牛肉を食べる人は、食べない人よりも大腸癌に罹るリスクが2.5倍高い。肉食者よりも菜食者の方がマラソンなどのスポーツの持久力に優れる。重量比のタンパク質の量は、牛肉よりも大豆の方が多い。

このほか、アグリビジネスが世界銀行やODAと結びついて途上国を支配していることや、世界の貧富差の拡大といった問題も指摘されていて、問題意識をくすぐられた。

肉食が地球を滅ぼす肉食が地球を滅ぼす
中村 三郎 / 双葉社 (2003-03)
タグ:畜産
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