2014年08月28日

「食の安全と環境」松永 和紀

地産地消、農薬、化学肥料、食品リサイクル、エネルギー消費、有機食品、遺伝子組み換え食品といった多岐にわたる視点から食の安全と環境を取り上げている。安全性とエネルギー消費やリサイクルがトレードオフになっている場合があることや、有機農産物の問題点も指摘しており、考えさせられる点が多かった。

地産地消
・小麦は水分含有率が高いとカビが増加する。日本では降水量が多く、収穫した小麦は乾燥させる必要がある。その結果、CO2排出量のLCAは北米産小麦とほぼ同じ。
・トマトは雨に打たれると病原菌や虫の被害を受けやすいため、ほとんどが温室栽培かビニール屋根の下での雨よけ栽培。CO2排出量は輸送距離より温室栽培に用いるエネルギー消費の差の方がはるかに大きい。したがって、冬季には地元産のトマトを食べるより、暖かい地域で加温されずに栽培されたトマトの方がCO2排出量は少ない。
・日本は火山が多いため、土壌中のカドミウム量が多い。0.4〜1ppmのコメは工業用ノリに、1ppm以上のコメは焼却処分されている。

農薬
・殺虫剤DDTはカーソンによって生物濃縮が指摘されて、パラチオンは散布時の中毒事故が多発したため、除草剤PCPは魚毒性が強かったため、イネのいもち病に用いられた有機水銀剤は水俣病を受けて、それぞれ禁止された。その後、植物特有の代謝系に作用する除草剤や、虫の脱皮や変態に作用する農薬といった、人や他の動物などへの毒性が低い農薬の開発が進んだ。
・有機リン系農薬は人の健康への影響が大きかったため、ネオニコチノイド系農薬へ切り替えられたが、ミツバチへの影響が問題になっている。
・WHOは2006年にマラリア予防のためにDDTを一部の地域で使用することを奨励した。DDTが禁止されてからマラリア患者は急増した一方で、DDTの発がん性や神経系・内分泌系への毒性について確たる証拠が得られていない。

食品リサイクル
・畜産は北海道や南日本などに集中しているため、偏在して発生する糞尿は利用されずに放置されている。

エネルギー消費
・エネルギー消費量に対する農業総生産指数は、日本は先進国の中でワースト3位(アメリカの5分の1)。ビニールハウスの冷暖房、高齢化や人件費が高いために機械への依存度が高いことが主な要因。
・温室効果ガス排出量の13.5%は農業由来。

有機食品
・ロンドン大学の研究者が50年間に発表された162本の論文をレビューした結果、有機食品と化学肥料で育てた食品との栄養価の大きな差はなかった。
・有機農産物は化学肥料で作られたものよりも大腸菌の感染割合が6倍高い。
・有機農業では土壌が大きく改善され、生物多様性が高まる利点があるが、有機物の投入によって水が富栄養化したり、土壌から亜酸化窒素を排出するほか、収量が低いためより多くの農地を必要とするデメリットが指摘されている。
・アイガモ農法では、アイガモへの寄生虫や、大腸菌などによる水質の汚染が高くなることが指摘されている。

安全性
・化学物質の毒性は、実験動物で得られた無毒性量に安全係数(通常は100分の1)を掛けた値が一日摂取許容量(ADI)として決められる。

遺伝子組み換え食品
・世界の全作付面積における組み換え品種の割合は、大豆70%、ワタ46%、トウモロコシ24%、ナタネ20%。米国では、トウモロコシ80%、大豆92%。

食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない (シリーズ 地球と人間の環境を考える11)食の安全と環境−「気分のエコ」にはだまされない (シリーズ 地球と人間の環境を考える11)
松永 和紀 / 日本評論社 (2010-04-20)
タグ: 環境
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