2018年02月10日

『日本会議 戦前回帰への情念』山崎雅弘 集英社新書

政治的思想や価値観を根本的に考え直させられる団体も、その歴史を学べば目的が理解できる。

日本会議は、日本を守る会と日本を守る国民会議が統合する形で1997年に誕生した。最も重点を置く運動目標は憲法改正。

敗戦後、国家神道を日本の民主化の障害と考えたGHQは、神道指令を日本政府に送り、神道系施設や団体への資金的・人材的サポートを停止することを命じた。神社を統括していた神祇院が廃止されると、神祇院から国費補助を受けていた法人など三団体が合同して神社本庁を設立した。神道指令の内容は、信教の自由、集会・結社・言論・出版の自由、国民主権、基本的人権の尊重といった形で間接的に日本国憲法に盛り込まれて恒久化された。神社本庁は、占領軍によって一方的に押しつけられたと理解する日本国憲法の破棄と、国家神道的価値観への回帰を盛り込んだ自主憲法の制定を重視した運動を展開した。

1930年に創設された生長の家は、天皇中心の世界観と宇宙や霊魂についての独自の考えを融合した思想を流布した。戦後のサンフランシスコ講和条約が調印されると、日本国憲法の破棄と明治憲法への回帰を主張し、政治団体を設立した。生長の家の教えに心酔した椛島有三らは、大学で左派学生と戦う学生運動を進めた後、その運動を一般社会人に広げて、1970年に日本青年協議会を設立した。日本青年協議会は、1979年に法案が成立した元号法制化運動で存在感を示し、この過程で結成された元号法制化実現国民会議は1981年に日本を守る国民会議に発展し、日本青年協議会は事務局を取り仕切ることになった。

東西冷戦期の日本でも、あらゆる宗教の価値を否定し、国ごとの固有文化を尊重する考えのない共産主義に共鳴する市民が少なからず存在していた。共産主義が広がることを懸念した宗教家や保守的な政治運動家は、1974年に日本を守る会を創設した。

私は、歴史に学ぼうとしない態度は、人間としての誠実さや責任感に欠けると思う。そもそも、歴史に学んで少しずつ修正することが本来の「保守」のはず。宗教も神道も否定する気持ちは全くないが、全体主義を生んだ国家神道はまっぴら御免だ。

日本会議 戦前回帰への情念日本会議 戦前回帰への情念
山崎 雅弘 / 集英社 (2016-07-15)
タグ:政治
2018年02月09日

自分の生き方・働き方のまとめ

これまでに読んだ自分の生き方・働き方に関する本の要旨をまとめます。

自分の生き方
・幸せを感じる人には、自分自身が好きであること、主体的、楽観的、外向的の4つの特徴が共通している。目標や夢が幸福度と関係している。
・自分に合う生き方とは、自分の持つ長所を最大限に発揮する生き方である。自分の得意な分野、好きな分野で勝負する。最も幸せになる方法は、自分の強みを活かして情熱を注げる仕事につくこと(世界でひとつだけの幸せ)。大きな幸福を感じるのは、自分の技術をフルに生かしながら、達成可能な目標に向けて邁進しているとき。ライフワークをもつ。
・自分が興味や意欲を持ってできることに夢中になって得たものが武器になる。自分にとって大事なことを知る。優先順位がはっきりさせる。自分にとって、より大事なことのために別のものを捨てる。自分にとって大切な何かのためになら、どんなものでも捨ててもかまわないと思えるものが見つかったら、タフに生きていくことができる。自分時間の中で何をしようとしているかを考えると、自分がどのような人間かが浮き彫りになる。
・自分が自分の人生をつくっているという自覚を持つ。
・他人からはどんなに馬鹿げて見えようと、自らの欲望にごまかしがないこと。世間体や金銭などを削ぎ落とし、自らが一番したいことをはっきり見定め、それに携わって人生を歩むべき。
・他に対してプライドを見せることは、他人に基準を置いて自分を考えること。他人にどう思われようとも、自分が本当に生きている手ごたえを持つことがプライドだ。他人に認められることは必要だが、そのことばかり求める人生ではつまらない。
・純自分時間の蓄積である無形資産が大きい人こそが本当に豊かな人であり、人生の成功者。
・あるがままの自分を受け入れてくれるところでは、自分の力を存分に発揮できる。努力も必要だが、自分を生かせてくれるような相手や場所を選んでこそ、人間は生き生きと魅力的に自己を表現できる。自分の居場所(能力を活かすことができる場所)を見つける。他人の行動を自分の感覚と結び付けるミラーニューロンによる共感回路がある。よい環境に自分を置くことによって、自発性を刺激できる。
・引きこもりは楽をとらず自分の感覚を信じるという苦行を選んだ人たち。
・心のうちで人間を超えた何ものかと対話しながら生きていくような視点をもつこと、自分を超えた地点から自分を見つめるまなざしを持つ。

自分の働き方
・仕事をおもしろいものにする5つのポイント
  - 仕事の意味を考える
  - ものごとを前向きに受け止める
  - 自己原因で考える
  - 自分の可能性を信じて自分らしくやる
  - 目指すことをあきらめない
・仕事とは何かをやりとげるためにするものだ。
・自分にはっきりとした天職のイメージがあるなら、その道を実現する最大の努力をする。
・人は誰でも世に知られるようになる前に、その間どのような人生を送っていたか全く知られない「謎の空白時代」がある。
・名もない人間の方が無条件の精神力を持って、世界に挑むというファイトを持ちうる。

孤独であるためのレッスン (NHKブックス) -
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孤独の愉しみ方―森の生活者ソローの叡智 (智恵の贈り物) -
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非属の才能 (光文社新書) -
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僕は君たちに武器を配りたい -
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自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間"を捨てられるか (青春文庫) -
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2018年01月16日

『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』奥田昌子 ブルーバックス

日本人は、遺伝的素因、生活習慣などの環境要因が欧米人とは異なるために、欧米で行われた結果をそのまま日本人に当てはめることはできないという観点から、生活習慣病やがんの予防法について論じる。

筋肉には赤筋(遅筋)と白筋(速筋)があるが、欧米白人では5〜6割が白筋に対して、日本人では7割が赤筋。日本人が筋肉を増やしても基礎代謝量はほとんど上がらないため、やせ体質にはならない。

食事からのカルシウムの摂取量と骨折の発生率には関連がない。日本人は、海藻、緑黄色野菜、大豆、小魚などからカルシウムを摂る習慣がある。日本人男性の調査からは、乳製品の摂取量が増えるほど、前立腺がんの発症率が上がる結果が得られている。

日本人の約半数はアルコールを肝臓で分解する酵素の働きが弱く、飲酒によって食道や大腸、肝臓などのがんを発症しやすい。

ブドウ糖は高濃度になると体内のタンパク質を変性させ、それが血管や内臓を傷つける。また、膵臓の機能を低下させてインスリンをほとんど分泌できなくなる。内臓脂肪が増えるとTNF-αの分泌が増え、細胞へのブドウ糖の取り込みを妨げるため、インスリンの効き目を悪くする。

食生活が肉と脂肪が中心の欧州では、炭水化物を摂った時にはインスリンを大量に分泌してブドウ糖を蓄える必要があった。欧米人が肥満になりやすいのは、脂肪の摂取量が多いことと、ブドウ糖の蓄積が多いため。日本人を含む東アジア人は、インスリンの分泌量が欧米白人の4分の1から半分しかない。アジアは土壌が肥沃で、炭水化物を豊富に含む穀物をいつでも食べることができ、ブドウ糖を蓄えておく必要がないため、分泌するインスリンの量が少なくて済む。しかし、炭水化物の摂取が減るとインスリンをつくる細胞の数が減り、インスリンをほとんど分泌できなくなると、肥満でなくても糖尿病になってしまう。低脂肪食と低炭水化物食を比較した調査では、体内の脂肪は低脂肪食の方が1.7倍減った。体重は低炭水化物食の方が減るが、炭水化物は水と結合しやすいので、水分が減るためと推測されている。また、複数の研究結果をまとめた分析からは、炭水化物が少ないグループは死亡率が1.3倍高くなることが明らかになっている。炭水化物の摂取量が多いと内臓脂肪がたまるが、極端な低炭水化物食は危険。膵臓の負担を軽くするために、急激な血糖値の上昇を抑えることもことも重要。大豆、魚(特にEPAやDHAが豊富な青魚)の摂取量が多いほど、糖尿病の発症率が低下する。

ナトリウムは人体に大切なものなので、尿として排泄される前に再吸収されて血液に戻ってしまう。塩分濃度を下げるために血液を薄めると、血圧が上がった状態となる。カリウムはナトリウムを伴って排泄されるので、血圧を下げるのに役立つ。カリウムは、野菜や豆類、イモ類、魚介類に豊富に含まれる。野菜や果物が多く、低脂肪、低カロリーのDASH食は、減塩食と同程度の血圧を下げる効果がある。

日本人を対象にしたコホート研究によると、EPAとDHAの摂取量が多いグループは心筋梗塞などの心臓病の発症率が4割低い。大豆の摂取量が多いグループは、脳梗塞の発症率が3分の2に、心筋梗塞の発症率が約半分になる。コレステロールの摂取が増えると体内での合成が低下するので、摂取を制限する必要はない。しかし、飽和脂肪酸はコレステロールの合成を促すため、それを含む肉の脂身やソーセージ、バター、生クリームなどの乳製品、パン、菓子、インスタント食品などは避ける方がいい。ただし、飽和脂肪酸の摂取量が少なくなると脳出血が起きやすくなるため、バランスよく食べる必要がある。

日本人は植物性の食品を多く食べてきたが、50歳以上の日本人とアメリカ人の大腸の長さを調べた結果はほぼ同じだった。日本人を対象とした調査によると、肉を多く食べると結腸がんの発症率が1.5倍高くなる(鶏肉については男女で結果が異なる)。EPAとDHAの摂取量が多いグループは、大腸がんの発症率が4割下がる。立ち仕事とデスクワークを比較すると、立ち仕事の人は大腸がんの発症率が7割以上低い。あらゆる身体活動が多い男性は、結腸がんの発症率が4割低い。

この本で最も驚いたのは、炭水化物を減らすと逆に糖尿病を発症しやすくなるということ。しかし、極端な低炭水化物食の危険性を指摘しているだけで、摂取量が多いと内臓脂肪が増えるため、適量に抑えるのが大切という結論は常識の範囲を超えない。結局、炭水化物や肉類は適度に、大豆や魚、野菜や果物は積極的に摂ること、すなわち、日本の伝統的な食事が、様々な病気を予防する上で好ましいというのが結論のようだ。

欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防
奥田 昌子 / 講談社 (2016-12-14)
タグ:健康 食事